点がある。
たくさんある。
それらを線で結んでいく。

　白線、
　　赤い線、
　　　黄色い線。
　直線、
　　曲線、
　　　ギザギザの線。
　点線、
　　実線、
　　　ミシン目の線。

僕の描いた色々な線は、
僕の隣にいる人に、
次から次へと、
消されてく。

その代わり、
幅0.5mmの、
真っ黒の直線が描かれる。

そう、紙の上には、
幅0.5mmの真っ黒の直線…
それしか、もう残っていない。

「私・母・祖母」、
「娘・私・母」、
「孫・娘・私」、
　―――女親子三代の物語。

これは2011年3月11日金曜日の東北の話ではありません。
これは2012年3月11日日曜日の東京の話です。
2012年3月11日の東京。
なにげなく過ごしている人たちの、なにげない日曜日。
ただ、その日は午後2時46分に黙祷のための合図があるだけ。
電車が緊急停止してそのまま黙祷の放送が流れたり、
市町村の役場からサイレンがなったり。
なんだかちょっぴり不思議な一日。
そういった合図に気付いて黙祷する人。
気付いたけれども、黙祷しない人。
気付かなくて、黙祷し忘れた人。
黙祷し忘れて、遅れてからする人。
黙祷するけど、何に対して黙祷すればいいのか分からない人。
そんな人たちがいる東京の風景画を描いてみます。